古詩十九 之一
行行重行行、與君生別離。
相去萬餘里、各在天一涯。
道路阻且長、會面安可知。
胡馬依北風、越鳥巣南枝。
相去日已遠、衣帯日已緩。
浮雲蔽白日、遊子不顧返。
思君令人老、歳月忽已晩。
棄捐勿復道、努力加餐飯。



古詩十九首 之二
青青河畔艸、欝欝園中柳。
盈盈楼上女、皎皎当窓?。
娥娥紅紛粧、繊繊出素手。
昔為倡家女、今為蕩子婦。
蕩子行不帰、空牀難独守。



古詩十九首 之三
青青陵上栢、磊磊?中石。
人生大地間、忽如遠行客。
斗酒相娯楽、聊厚不為薄。
駆車策駑馬、遊戯宛與洛。
洛中何欝欝、冠帯自相索。
長衢羅夾巷、王侯多第宅。
両宮遥相望、双闕百余尺。
極宴娯心意、戚戚何所迫。

古詩十九首 之一、・・・之十九


古詩十九首 之一、之二、之三、之四 ・・・・・・・・之十九




古詩十九首.其之一は「文選」にも見える.一人の一時の作でない,名称の纏めから,「文選」では作者不明.「玉台新詠」では,19首中8首は漢の枚乗の作品として収められているが、今日ではそれは疑われていて、漢の武帝時代の作ではないとされはじめている。ここでは、その考察をしない。この詩は後世に多大な影響を持つものであることでここに紹介するものである。

古詩十九首 (1) 漢詩<88>U李白に影響を与えた詩520 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1377

古詩十九 第一首.
行行重行行、與君生別離。
相去萬餘里、各在天一涯。
道路阻且長、會面安可知。
胡馬依北風、越鳥巣南枝。
相去日已遠、衣帯日已緩。
浮雲蔽白日、遊子不顧返。
思君令人老、歳月忽已晩。
棄捐勿復道、努力加餐飯。
別れて旅立って、昨日も今日も、歩み進めておられることでしょう、わたしは『楚辞』で世の中で最も悲しいことといわれた「生きて離別すること」で悲しみにあふれているのです。
あなたは去って行き、万里を隔てて各々が天の一方に暮らす身の上になっているのです。
その間の道は山河を隔て険しくそして長く果てしなく遠いのです。又逢える日は何時の日の事でしょう、
北方異民族の馬は北風に身をよせていななき、南方越の鳥は技を求めて巣くうと申します。(それもこれも故郷の忘れ難いものばかり、わたしは故郷にはなり得ていないのですか。)
故郷を去るとすべて故郷は忘れがたいものなのに、お別れしてから、日数も遠く過ぎました。悲しさのあまり、身もやせ細って、衣も帯も日増しにゆるくなるばかりです。
あの浮雲はお日様をおおいかくしているから、旅人のあなたには見えないので、あなたはお帰りなさらないというのでしょう。
あなたのことを思うとにわかに年がふけるようですし、それに本当に歳月は早く暮れていくのです。
わが身の棄てられたことなど今さらなに言いたくありません、あなたが務めて食事をとられ、お体を大切になさいますように思い願っております。

行き行き重ねて行き行く、君と生きて別離す。
相去ること萬餘里、各々天の一涯に在り。
道路 阻にして且つ長し、會面 安くんぞ知る可けんや。
胡馬 北風に依り、越鳥 南枝に巣くう。
相去りし 日々已に遠く、衣帯は 日々已に緩む。
浮雲は 白日を蔽い、遊子は 返り顧ず。
君を思い 人をして老いせしむ、歳月 忽ち已に晩れる。
棄捐 復た道う勿からん、努力し 餐飯を加えよ。


現代語訳と訳註
(本文) 第一首.
行行重行行、與君生別離。
相去萬餘里、各在天一涯。
道路阻且長、會面安可知。
胡馬依北風、越鳥巣南枝。
相去日已遠、衣帯日已緩。
浮雲蔽白日、遊子不顧返。
思君令人老、歳月忽已晩。
棄捐勿復道、努力加餐飯。


(下し文)
行き行き重ねて行き行く、君と生きて別離す。
相去ること萬餘里、各々天の一涯に在り。
道路 阻にして且つ長し、會面 安くんぞ知る可けんや。
胡馬 北風に依り、越鳥 南枝に巣くう。
相去りし 日々已に遠く、衣帯は 日々已に緩む。
浮雲は 白日を蔽い、遊子は 返り顧ず。
君を思い 人をして老いせしむ、歳月 忽ち已に晩れる。
棄捐 復た道う勿からん、努力し 餐飯を加えよ。

(現代語訳)
別れて旅立って、昨日も今日も、歩み進めておられることでしょう、わたしは『楚辞』で世の中で最も悲しいことといわれた「生きて離別すること」で悲しみにあふれているのです。
あなたは去って行き、万里を隔てて各々が天の一方に暮らす身の上になっているのです。
その間の道は山河を隔て険しくそして長く果てしなく遠いのです。又逢える日は何時の日の事でしょう、
北方異民族の馬は北風に身をよせていななき、南方越の鳥は技を求めて巣くうと申します。(それもこれも故郷の忘れ難いものばかり、わたしは故郷にはなり得ていないのですか。)
故郷を去るとすべて故郷は忘れがたいものなのに、お別れしてから、日数も遠く過ぎました。悲しさのあまり、身もやせ細って、衣も帯も日増しにゆるくなるばかりです。
あの浮雲はお日様をおおいかくしているから、旅人のあなたには見えないので、あなたはお帰りなさらないというのでしょう。
あなたのことを思うとにわかに年がふけるようですし、それに本当に歳月は早く暮れていくのです。
わが身の棄てられたことなど今さらなに言いたくありません、あなたが務めて食事をとられ、お体を大切になさいますように思い願っております。


(訳注)
第一首.
此の詩は妻が帰らぬ夫の身を切切と思う情が流露された詩である.文字通り自然な愛情の歌とみるべきであろうが、中国の註釈家達は、古来総べての詩は道義や政治の為のものであるとして、此の詩にも裏面の意味を強いて求めようとする傾向がある。

行行重行行、與君生別離。
別れて旅立って、昨日も今日も、歩み進めておられることでしょう、わたしは『楚辞』で世の中で最も悲しいことといわれた「生きて離別すること」で悲しみにあふれているのです。
・行行 留守居の女性の言葉。「閔子侍側ァァ如也,子路行行如也。」(閔子【 びんし】 、 側に侍す、ァァ如【ぎんぎんじょ】たり。子路【しろ】、行行如【こうこうじょ】たり。)
・生離別 世の中で最も悲しいことは生きて離別することである.『楚辞』九歌第二 (六)少司命「悲莫悲兮生別離 樂莫樂兮新相知. 」(悲しきは生別離より悲しきはなく、楽しきは新相知より楽しきはなし。)

相去萬餘里、各在天一涯。
あなたは去って行き、万里を隔てて各々が天の一方に暮らす身の上になっているのです。
・天一涯:天の果て.空と空の果て,
・相去 互いにと読むが女は動かないで男の身が遠くに去る場合も互いにという語を使う。

道路阻且長、會面安可知。
その間の道は山河を隔て険しくそして長く果てしなく遠いのです。又逢える日は何時の日の事でしょう、
阻且長;山河を隔て険しく,そして,長い。

胡馬依北風、越鳥巣南枝。
北方異民族の馬は北風に身をよせていななき、南方越の鳥は技を求めて巣くうと申します。(それもこれも故郷の忘れ難いものばかり、わたしは故郷にはなり得ていないのですか。)
・胡馬依北風:北方,または西方の匈奴の馬.北方の異民族(遊牧・騎馬民族)に生まれた馬は北風が吹いてくると北風に向いて嘶き,身を寄せて故郷を懐かしがるようにみえることから、故郷の忘れ難い例えとしている。
・越鳥巣南枝:南方の越の国で生まれた鳥は北の土地に連れていっも,南向きの枝に巣をかける.この句も故郷の忘れ難い例えである。

相去日已遠、衣帯日已緩。
故郷を去るとすべて故郷は忘れがたいものなのに、お別れしてから、日数も遠く過ぎました。悲しさのあまり、身もやせ細って、衣も帯も日増しにゆるくなるばかりです。
衣帯:(1)着物と帯.装束(2)着物の帯

浮雲蔽白日、遊子不顧返。
あの浮雲はお日様をおおいかくしているから、旅人のあなたには見えないので、あなたはお帰りなさらないというのでしょう。
浮雲:(1)浮き雲,空にうかんでいる雲.(2)自分に全く関係の無い物事の例え存在性のうすい例え,また,軽いものの例え,(論語・述而)「不義而富且貴,於我如浮雲」(3)悪人の例え,浮雲が太陽の光を遮るから言う.遊子:他郷にある人,旅び人.(史・高祖紀 「遊子悲故郷」)(4)人生。

思君令人老、歳月忽已晩。
あなたのことを思うとにわかに年がふけるようですし、それに本当に歳月は早く暮れていくのです。


棄捐勿復道、努力加餐飯。
わが身の棄てられたことなど今さらなに言いたくありません、あなたが務めて食事をとられ、お体を大切になさいますように思い願っております。
inserted by FC2 system