虞美人


虞美人歌  秦末・虞美人 

            
秦末 虞美人


虞美人歌
漢兵已略地,四方楚歌聲。
大王意氣盡,賤妾何聊生。


虞美人歌
漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。
大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。


現代語訳と訳註
(本文) 虞美人歌
漢兵已略地,四方楚歌聲。
大王意氣盡,賤妾何聊生。


(下し文) 虞美人歌
漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。
大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。


(現代語訳)
漢の軍勢がすでに楚の国土を侵略してきたようだ。四方周りは敵の漢軍であるがその中に裏切りなのか故郷の楚の歌声が聞こえる。
落胆した覇王項羽大王の意気は尽き果てたのだ。この後、このわたくしは何を頼りに生きていけばいいのでしょうか。 


(訳注)
虞美人歌
この詩は『史記正義』に出てくる楚の項羽(項籍)の女官である虞美人の作といわれる。項羽が、垓下で敗れたときに慷慨悲歌したときの詩
項羽『垓下歌』「力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!」
であるが、それに対して虞美人が歌い舞った。
項羽と劉邦は戦いと和睦を繰り返しながら、垓下で雌雄を決する一戦を迎える。この時、項羽の少数の軍勢を大軍で取り囲んだ劉邦は、味方の兵士たちに項羽の祖国楚の歌を歌わせる。この歌を聞いた項羽は味方の兵が寝返ったのだと誤解して絶望する。その絶望の中で歌ったとされるのが、「垓下歌」である。
・西楚覇王・項羽の愛姫・虞姫の唱った歌。 
・この悲劇に基づき後世、同題の詩が作られる。 
・虞美人:項羽の女官。「美人」は位。
・実質上の妻。『史記・項羽本紀』虞姫は、どの戦闘にもついて行った。


漢兵已略地,四方楚歌聲。
漢の軍勢がすでに楚の国土を侵略してきたようだ。四方周りは敵の漢軍であるがその中に裏切りなのか故郷の楚の歌声が聞こえる。
・漢兵:漢の劉邦の軍隊。 ・已:すでに。 ・略地 略:侵略。地:領地が侵される。
・裏切られて漢の兵士に楚人がなってしまったということ。故国の楚は、敵・漢の手に落ちてしまったことをいう。四面楚歌のこと。


大王意氣盡,賤妾何聊生。
落胆した覇王項羽大王の意気は尽き果てたのだ。この後、このわたくしは何を頼りに生きていけばいいのでしょうか。 
・大王 西楚覇王・項羽への虞美人からの呼称。
・意氣盡 意気が尽きた。
・賤妾 このわたくし。いやしき わたくしめ。女性が謙譲して使う自称。
・聊 たよる。よりどころとする。やすんじる。
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